表参道の静かなエリアに位置する美容クリニックで、「10年後も愛せる自分であること」をコンセプトに診療を行う橘美咲院長。形成外科専門医として培った確かな技術と、患者様一人ひとりと向き合う真摯な姿勢で、多くの信頼を集めている。
Section 0: クリニック紹介
私が院長を務めるこのクリニックは、表参道の裏路地、少し静かなエリアに位置しています。コンセプトは「10年後も愛せる自分であること」。私たちは、いわゆる大手チェーンさんのような「薄利多売・回転率重視」のクリニックではありません。派手な広告も打っていませんし、待合室で他の患者様と顔を合わせることも一切ないよう、完全予約制で動線を設計しています。ここに来る患者様は、「劇的に顔を変えたい」というよりは、「今の自分の良さを残しつつ、マイナスを取り除きたい」「誰にもバレずに綺麗になりたい」という、美意識が高く、かつ慎重な方が多いですね。クリニックの内装も、美容外科特有の「キラキラした感じ」は排除しました。無機質すぎず、かといって華美すぎない、落ち着いたグレーと木目を基調にしています。それは、ここが「魔法をかける場所」ではなく、解剖学に基づいた「医療を提供する場所」だと認識していただきたいからです。私を含め、在籍する医師は全員、形成外科専門医の資格を持っています。「映え」よりも「安全性」と「機能性」を最優先する。それが私たちのクリニックの矜持です。
Section 1: プロフェッショナルとしての「美学」と「技術」
Q1. 先生が美容外科医として、最も「こだわり」を持っている瞬間はいつですか?
少しマニアックに聞こえるかもしれませんが、手術の「最後の縫合(クロージング)」の瞬間です。多くのドクターは、メインの処置――例えば二重のラインを作ったり、たるみを引き上げたりする工程――が終わると、少し安堵してペースを緩めることがあります。酷い場合だと、縫合だけ若手の先生や看護師に任せるケースすらあると聞きます。でも、私は絶対にそれをしません。なぜなら、「傷跡の美しさ」こそが、その手術の真の完成度を決めるからです。
Q2. 「美しさ」の定義は人それぞれですが、先生が考える「理想の仕上がり」とはどのような状態ですか?
私が考える理想の仕上がり、それは「久しぶりに会った友人に『なんか綺麗になった? 痩せた?』と聞かれる顔」です。『整形した?』と聞かれるのは、私の中ではある意味で「敗北」に近いかもしれません。私が目指すのは、「ノイズのない顔」です。たるみによる影、不自然な段差、疲れを感じさせるくぼみ。そういった視覚的な「ノイズ」を取り除いてあげることで、その人が本来持っていたパーツの魅力が引き立つ。
Q3. 他の医師にはない、先生だけの「強み」や「得意施術」について、あえて専門用語を使わずに教えてください。
そうですね……あえて一言で言うなら、「組織を『壊さない』手術」でしょうか。美容外科の手術は、多かれ少なかれ体を傷つける行為です。ですが、私の強みは、そのダメージを最小限に抑える「タッチの優しさ」にあると自負しています。派手な変化を出すために無理やり引っ張ったり、切ったりするのではなく、解剖学的な理(ことわり)に従って、あるべき位置に組織を戻す。地味な作業ですが、この「愛護的な操作」こそが、私の最大の商品価値だと思っています。

Section 2: 誠実さと人間性を探る「本音」
Q4. もし患者様が、医学的に見て「似合わない」「リスクが高い」施術を希望された場合、先生ならどう対応されますか?
私は、はっきりと「NO」と言います。「今のあなたには必要ありません」と。もちろん、経営的な視点で見れば、患者様の希望通りに手術をしたほうが売上にはなります。でも、美容外科医である前に、私は一人の医師です。その手術をすることで、将来的に皮膚が伸びてしまったり、呼吸がしづらくなったり、明らかに不自然になることが予測できるなら、メスを入れるわけにはいきません。
Q5. これまで多くの患者様と向き合ってきた中で、最も印象に残っているエピソードを教えてください。
形成外科から美容外科に移って間もない頃に出会った、ある50代の女性のことが忘れられません。彼女は重度の眼瞼下垂(まぶたが下がって目が開きにくい状態)で、長年「いつも眠そう」「不機嫌そう」と言われ続け、人と目を合わせるのが怖いと仰っていました。「先生、私、やっと人の顔を見て話せます。空がこんなに広かったんですね」その言葉を聞いた時、私がやっていることは単なる「お直し」ではなく、「その人の心の呪いを解くこと」なんだと気付かされました。
Q6. 先生ご自身が、もし美容医療を受けるとしたら、どんな医師に執刀してもらいたいですか?
これは即答できますね。「臆病な医師」です。誤解を招くかもしれませんが、外科医にとって「臆病であること」は最大の才能だと思っています。「自分なら絶対に失敗しない」「俺に任せろ」と過信している医師は、いつか必ず大きなミスをします。結局、「神の手」なんてものは存在しません。あるのは、泥臭いほどの基本の積み重ねだけ。それを知っている先生に、私は身を委ねたいですね。

Section 3: ギャップで親近感を作る「プライベート」
Q7. 激務の毎日かと思いますが、オフの日はどのようにリフレッシュされていますか?意外な趣味などはありますか?
平日は交感神経が優位になりっぱなしなので、休日は「デジタルデトックス」を心がけています。スマホを置いて、美術館に行ったり、ワインスクールに通ったりしています。特にワインは好きですね。ワインって、ブドウの品種や土壌、作られた年によって全く味が違うじゃないですか。その背景にあるストーリーや、香り・味の複雑なバランスを分析するのが、どこか診断学に似ていて面白いんです。意外な趣味で言うと……実は「プロレス観戦」が好きなんです。驚きました?きっかけはたまたま動画で見たことなんですが、鍛え上げられた肉体同士がぶつかり合う、あの嘘のない迫力に圧倒されまして。私たちは普段、ミリ単位の繊細な作業をしているので、ああいうダイナミックで感情を爆発させる世界を見ると、すごくスカッとするんです。
Q8. スタッフの方から見た先生は、どんなキャラクターだと言われることが多いですか?
うーん、よく言われるのは「オペ室と普段のギャップがすごい」ですね。手術中は、スタッフにも厳しく接します。「今のガーゼの渡し方は遅い」「ライトの角度が違う」と、細かい指示を飛ばすので、正直「怖い」と思われているかもしれません。でも、一度白衣を脱ぐと、途端にポンコツになるらしくて(笑)。例えば、白衣のままコーヒーを買いに行こうとしたり、自分のスマホを探してクリニック中を歩き回っていたらポケットに入っていたり……。自分ではしっかりしているつもりなんですが、仕事で全エネルギーを使い果たしてしまうので、日常モードの私はかなり省エネ運転なんだと思います。
Section 4: 未来の患者様への「約束」
Q9. 美容医療を受けるかどうか、何年も悩んでいる読者がたくさんいます。そんな彼女たちに、一言声をかけるとしたら?
「悩んでいるなら、今はまだしなくていい」。まずはそうお伝えしたいです。美容整形は、決して魔法ではありませんし、受けることが正義でもありません。迷いがあるうちに勢いで受けてしまうと、術後に小さなトラブルがあった時、必ず後悔します。だから、焦る必要は全くありません。ただ、もしそのコンプレックスのせいで、鏡を見るたびに溜め息が出たり、人の視線が怖くてやりたいことを我慢しているのなら……一度、「相談」だけでも来てみてください。私たちは、あなたの顔を変えるためだけにいるのではありません。あなたが自分を好きになるための「選択肢」を提示するためにここにいます。あなたの悩みは、決してあなた一人のものではありません。勇気を出して、その重荷を半分、私たちに預けに来てください。いつでも待っています。
Q10. 先生にとって、美容外科医とは「人生」においてどのような職業ですか?
私にとって美容外科医とは、「職人」であり、同時に「伴走者」だと思っています。技術を磨き続ける職人としての厳しさは、一生手放せません。医学は日々進歩していますし、今日の手術が100点だったとしても、明日はもっと良い方法が見つかるかもしれない。その探求心を持ち続けることは、プロとしての最低条件です。ですが、それだけでは足りない。患者様は、単に顔を変えたいのではなく、その先にある「幸せな人生」を求めて来てくださいます。だから私は、手術をして「はい、終わり」ではなく、その方が自信を持って生きていけるよう、背中を押し、時には悩みを聞く伴走者でありたい。メスという、ある意味で暴力的な道具を使って、人を幸せにする。この矛盾に満ちた、けれど最高にクリエイティブで愛おしいこの仕事を、私は手が動かなくなるその日まで、誇りを持って続けていきたいと思っています。